事例・お客様の声 Project

人をつなぐ食卓のある家

住まいのインタビュー
人をつなぐ食卓のある家

静岡県賀茂郡東伊豆町稲取地区は、伊豆東海岸のほぼ中央に位置し、岬の温泉地とブランド金目鯛「稲取キンメ」で知られる自然豊かなまち。2024年10⽉に⼊籍された妻Kさんと夫Sさんは、それぞれ東京から移住し、ここ稲取で出会ったという。伊豆急行伊豆稲取駅から徒歩15分。海の傍の一軒家で暮らすお二人に、地元の人たちとの交流や、稲取での働き方について伺った。

友人に会いに東伊豆へ

完全リモートワークの職種を活かし、旅するように暮らしていたお二人。住み慣れた東京を離れ、移住を決めた理由とは何だったのだろうか。

妻Kさん:私の友人が先に東伊豆町へ移住していたので、友人に会うために遊びに来たのがきっかけですね。東伊豆で過ごす時間があまりにも楽しくて毎月通うようになり、最初は1泊2日だったのがそのうち2泊3日、1週間と滞在期間が伸びてきて、もういっそのこと家を借りた方がいいんじゃないかと思うようになったのです。転職して仕事がフルリモートになり、東京で働く必要がなくなったことも大きな理由でした。それでも当初は東京と稲取の2拠点生活をしていましたが、そのうち東京には戻らなくなったので、半年後には完全に移住しました。それが2021年の9月頃だったと思います。

夫Sさん:僕は、東京にいた頃からほぼリモートで働いていましたが、コロナ禍になったことで、もう東京に住む意味がないと感じるようになったんです。そこで日本一周しながら住みたい場所を探したいなと思って旅を始めたのがきっかけですね。ところが旅をはじめてすぐに下田が気に入り、東京と行ったり来たりするようになりました。ある時下田で知り合った友人から稲取の移住者向けイベントを教えてもらい、イベントの登壇者として参加していたKさんと知り合ったんです。

Sさんとの出会いに刺激を受け、一度稲取を離れて旅に出たというKさん。稲取以外のローカルな土地を見てまわり、再び出会ったSさんと旅を続け、最終的に2人が選んだ移住の場所は稲取だったという。

東伊豆の人と自然に魅せられて

夫Sさん:2人で今の家に住み始めたのは2023年の5月です。僕は下田に友人がいるし、暮らしやすくて気に入っていましたが、Kさんは稲取への愛がすごく強くて、その想いは自分とは全く違うと感じました。住みたいと思う場所があるって素敵だなと思いましたし、彼女が住みたいというまちがどんな所なのか興味を持ったというのも移住した理由の一つですね。

妻Kさん:自分では気づかなかったのですが、旅先でもよく「この風景は稲取に似ている」と言っていたみたいです。他の土地に行っても稲取の山や海が好きだと感じるのは、結局、自分と稲取との関わり方が愛着に繋がっているんだと思います。一度離れたことで、稲取が好きなんだなと改めて思うようになり、戻ってくることにしました。

稲取の人たちは、皆さんシャイだけど優しくて、私たちのような移住者にも皆さんとても親切にしてくださいます。今住んでいるこの借家も、近所のおじいさんが一緒に探してくださった物件ですし、地元の方にお野菜やお魚をいただくこともあります。また、たまたま入った食堂でお店の人と仲良くなり、次の日から本当にお手伝いをしたこともあります。そうやって、さりげなくまちの仲間に入れて下さる感じがとても嬉しかったんだと思います。

夫Sさん:実際住んでみると、彼女が言う通り、オープンマインドな人が多いと感じます。温泉のまちなので、観光業の方が多いからかもしれません。僕の出身も田舎ですが、雰囲気が全く違いますね。

海のそばで太陽を感じながら働く

近所のおじいさんが見つけてくれたという一軒家は、大工をしていた前の住人によって内装が綺麗にリフォームされていて、1階にはキッチンとリビング、+Oスペース*(ワークスペースのこと。以下、+Oスペース)、ゲストルーム、2階の2部屋とかなり広い。決め手となったのは、友人たちが泊まれるゲストルームがあること、大勢で食事ができる広いキッチンとリビングがあること、Sさんの+Oスペースがあることだったという。

夫Sさん:旅先での仕事は、各地のコワーキングスペースを利用していましたが、昨年この家に入居してからは、ずっと家で仕事をしていて、2、3カ月に1度東京の会社に行っています。東京までは2時間半ほどかかりますが、乗り換えが無いので、意外と楽なんです。週1で東京に通っている人もいますよ。

東京にいた頃もほぼ自宅で仕事していましたが、その頃は朝から深夜まで一日中パソコンに向かって仕事をして、その合間に食事をして、というような毎日でした。稲取に来てからは、朝の散歩から始まり、陽が落ちる頃に仕事を終えるという、毎日太陽の光を感じながら規則正しい生活をするようになったのが大きな変化ですね。それでも仕事が忙しい時は1日500歩しか歩いていない日もあります。その分、朝早く起きて海から登る朝日を見に行ったり、週末にゆっくり散歩したりして過ごすようになり、東京にいた頃より健康的な生活を送っていると思います。

妻Kさん:週末には仕事を早めに切り上げて、近くの日帰り温泉に行くこともあります。多くの友人が遊びに来てくれるので、そんなときには一緒に食卓を囲んだり、お気に入りの場所や、温泉に案内したりすることもあります。

人々が集う場所をつくりたい

妻Kさん:私も最近までフルリモートで仕事をしていましたが、今は仕事を辞めて、民泊を始める準備や、ツアーや街歩きの企画、稲取に住む人たちと集うイベントの企画などをしています。私たちは、普段から人と食卓を囲むことを大切にしていて、ここで友人たちと大きなお魚を捌いて食べたり、タケノコを掘って、タケノコパーティーをしたりしています。そんな風に、稲取に訪れる人たちがふらっと立ち寄れる居場所みたいなものをまちの人たちと一緒につくれたらいいなと思っています。

最近では地元の人から里山を借りて、畑も始めているというKさん。さまざまな活動を通じて地元の人たちとの結びつきをさらに深めている。

妻Kさん:住み始めた頃は、知らない人ばかりの土地で暮らすのが不安だったので、自分の住むまちを居心地よくしたいと、地元の人たちと積極的に関わって知り合いを増やしていました。今はもっと自然が近くにある暮らしがしたいという想いや、稲取に遊びに来た人たちにも、以前の自分のように稲取を楽しんでもらいたいという気持ちで活動していますね。

日本各地を旅するように暮らし、「景色の良い場所は沢山あっても、住んでみたいと思うきっかけは、やっぱり人なんです」と、稲取に辿りついたKさんとSさん。これからは、そんなお二人に会うために、稲取を訪れる人がますます増えるのかもしれない。

(*)+O(プラスオー):静岡らしい住まいにオフィス空間をプラスした住環境のこと。「住まい+Office」から静岡県が作成した造語。

Information

所在地 東伊豆町稲取
形態 借家(戸建て)
構造・階数 木造
延べ面積 103㎡